(写真)雑誌『I.D.』で紹介されたブリュッセルのデザイン集団、Atelier A1


ニューヨーカー、ベルリナー、パリジャン、江戸っ子。その都市に生活する人々を指し示す言葉は数あれど、ブリュッセロワ(ブリュッセル市民)が発する音には何か特別な響きが感じられます。子気味よいエスプリの効いた音韻は、そこに住む人々のソフィスティケートされた生活ぶりを端的に表しているようです。
チョコレート、ワッフル、ビール、さらにはコミック「タンタン(TINTIN)」などあまりにステレオタイプ的な文脈で語られてきたヨーロッパの小国ベルギーに、デザインの視点から鋭い切り込みをいれた雑誌がありました。世界を代表するデザイン雑誌『I.D.』(2006年11月号)です。
そもそも『I.D.』がひとつの国にフォーカスをあてて特集を組むこと自体まれなのですが、その短いヘッドコピーが同国のデザインの現状をたくみにすくい上げています。『BELGIUM MUSCLES IN』(ベルギーが強引に割り込んでくる、なわ張り荒らすといった意味です)の題された同号は、先のステレオタイプ的なイメージを払拭するにはあまりあるほどの力強いブリュッセロワたちのデザイン・パワーを如実に示しています。
中でも、男性3人、女性3人からなる若手デザイナー集団「Atelier A1」には相当数のページが割かれており、その実力のほどをうかがい知ることができます。プロダクト、テキスタイル、照明などさまざまな個性をもった集団です。その住所、「No.1, Rue d'Andenne」をもとにネーミングされた「A1」のアトリエは、1920年代のガレージを独自にリノベーションしたもの。古い建物を改装することは特に目新しいことではありませんが、同誌によれば、ことベルギーに関しては例外的なことのようです。様々な国々でデザインの教育をうけたブリュッセロワが既存の文化に対抗しようとする、みなぎる意欲の一端をうかがい知ることの出来るエピソードですね。
世界的デザイナー、ロン・アラッドさんがくしくもこう述べています。
「デザインの領域で、次なるビッグなムーヴメントはどこからやってきてもおかしくない。それがベルギーであっても…。」
そんな言葉に思いを馳せながら、コンテンポラリー・デザインの起爆剤、ベルギー・ブリュッセルを訪ねてきました。